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ベトナム人の転職

ベトナム人は、日本人に比べ頻繁に転職をします。若者のなかでは1~2年ごとに職場を転々とする人も珍しくなく、日本人には驚きの種です。ここではベトナムの転職の現状について、お伝えします。

「××さん、会社辞めたらしいよ」。

こんな話をよく聞くベトナムの職場です。

ベトナム人は日本人に比べ、頻繁に転職をします。その理由として多く聞くのは「給与(もしくは職場環境)がもっと良い職場で働きたい」「スキルアップしたい」など。もちろんこれは個人差があって、上記以外にも「起業のため」「新しい業種に挑戦したい」「故郷に帰る」など、さまざまです。

いずれにしても彼らがこうして頻繁に転職できるということは、成長市場のベトナムには雇用が多いこと、また日本では頻繁すぎる転職は良くない印象がある一方、ベトナムではこれに対する抵抗感がないという風潮と関係していると思います。

とある30代のベトナム人男性はここ6年ほどで、ホテルスタッフ、外資系商社、保険販売と、まったく異なる業種を経験しました。2人の子どもがいる家庭の大黒柱であり、自分の営業能力に自信を持つ彼は、昇進と高い収入を求めて会社を移ってきたと言います。

向上心、そして家庭の優先順位が高いベトナム人の転職観を表している例だと思います。ただし、彼は現在マネージャー職で収入や地位も安定しており、これを手放すことを今は考えていないようでした。年齢が30代後半に差し掛かったことも会社にとどまる要因のようで、年齢が上がるほど離職率が低くなる傾向もあるようです。

やはり大事なのは安定

もちろん、10年選手がいる職場もあります。日系でもいくつかこうした企業がありますが、これらに共通しているのは、やはり安定して働ける職場環境のように思われます。

ある20代のベトナム人女性と話した時、たまたまとある国際機関の話になりました。そのなかで彼女は「私、本当はこの機関に入社したかったけど、空きが出なくて。ここの社員、なかなか辞めないからなぁ」と悔しそうにしていました。社員が辞めない理由は「福利厚生が充実、事務所がきれいで職場の雰囲気が良い、倒産の心配がない、勤めればキャリアに箔がつく」ということでした。

本当に職場の雰囲気が良いのかは、彼女が噂で聞いた話だそうなので断定できませんが、いずれにしてもベトナム人が職選びで考慮する一要素であることは分かります。そしてそれ以外の条件を見れば、誰でも働き続けたいと思える要素が多いことも確かです。こうしてみると職場に求める条件はベトナム独特の事情というより世界のどこでも共通する割とシンプルなものである一方、これに対する行動が転職という形ですぐに表れるのがベトナムと言えるのではないかと思えます。

ところでベトナム人の頻繁な転職からくるネガティブな面を挙げるとすれば、会社への滞在期間が短いゆえに熟練工や業界・社内事情に通じた人が、多く育ちにくい点ではないかと思います。一方、現地スタッフの活躍がベトナムでの成功を左右する外資企業にとって、熟練工や業界通は貴重な戦力です。

以前、駐在員の交代と共にがらりと変わった経営方針や社内環境が受け入れがたいとのことで、数人のベトナム人社員が辞めた企業の話を聞きました。状況を簡単に説明すれば、売上高重視の新任駐在員が、社員に高すぎる目標を課したのです。確かに高い目標は必要ですし、売上高も大事です。しかし上司の価値観ややり方を押し付けすぎると、外資系企業にとって貴重な熟練工や業界・社内事情通のベトナム人社員まで失う場合があるのも事実です。

転職が頻繁な土地柄だからこそ、駐在員はベトナム人スタッフと向き合って特性を見極め、現地に合わせたかじ取りをしていくことが大事だと思います。


あさき・ともみ 秋田県生まれ。2000年からライター、韓国語翻訳・通訳、日本語教師と、言葉に関連した仕事に携わっている。2012年からハノイ市に居住。ベトナム航空機内誌「ヘリテイジ・ジャパン」への執筆や編集など活動を続けている。

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