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日本での幸せライフレシピ

決断の速さ

ベトナム企業は、日本企業に比べて決断が速いと言われます。その決断力はどこからくるのでしょうか。ここでみていきたいと思います。

ベビー・子ども用品を輸入販売する店舗を展開している、ベトナム人社長に以前、お話をうかがう機会がありました。

社長に日本企業との取り引きについて聞いたところ「日本企業は仕事が丁寧で信頼性が高いが、プロセスが多くて契約や実行までが長い」と仰っていました。新しい事業を始める際はもちろん、従来の手続きを変更する時、変則的な事態が発生した時、日本の担当者は独断で返事せず、上司、またその上司に確認をとって初めてOKとなるため、他国の企業より時間がかかるということでした。

ではベトナム企業はどうかと聞くと、ある程度の決断は担当者に任せていると言います。例えばある商品が人気を獲得したら、広報部がSNSでPRし、チラシを作り、まとめ買いキャンペーンを行うなど、予算内でどんどん広報を進めていけます。あくまで同社の進め方なので、他社は異なるかもしれません。しかし往々にしてベトナムでは、一定の決定権を担当者や部署のリーダーが持っているようです。

事業を進める時、多くの日本企業は綿密な計画にもとづいて決断するのに対し、ベトナム企業はある程度の方向性が決まったら決断、実行しつつ、必要に応じて軌道を修正していくというプロセスの違いがあるように思います。後者の方法を取ると、大体予想がつきますが、状況が変化しやすくなります。変化が多いということは、働く側に臨機応変さや機動力が必要とされるということですが、その点ベトナム人はかなりの実力だと個人的には感じます。

とあるリサーチ会社での話ですが、顧客の都合で納期は固定のまま調査項目が変わるなど状況が二転三転していました。これに対しベトナム人社員は顧客に報告書の分納などを交渉する一方、内部では分業制で仕事を進め、追加されそうな調査項目に備えるなど先回りの対応をしていました。追い詰められた状況でも最後に帳尻を合わせてくる対応力と瞬発力は、ベトナム人のお家芸を見ているようで感嘆したものです。

日本人も臨機応変に

「ベトナム人マネージャーが勝手に割引展開して困っている」。ある日、物販事業を手掛ける日本人マネージャーが、困惑した表情でこぼしていました。ベトナム人マネージャーが、ある商品の販促をするということで、独断で大型割引キャンペーンを展開したとか。日本人マネージャーからすると、最初にこの商品を定価で買った顧客への面目が立たず、大きな値下げが商品イメージも下げることに懸念があるということでした。

一方のベトナム人マネージャーはどうかというと、「商品の宣伝ができた」とまんざらでもない様子。確かに割引展開は、新規顧客を取り込み客層を広げるという意味では有効な広報手段といえます。当時は、既存のベトナム人顧客からのクレームも出ていない様子でした。

これは、一貫性と変化をどう認識しているかの差かもしれません。ベトナムの場合、多少の変化があっても一貫性がないとの批判を受けにくいので、どんどん決断、実行していけるのだと思います。先にも説明したように、ある程度の方向性が決まったら修正しつつ実行するベトナムでは、仕事場も含む生活全般で変化が多いため、日本人ほど一貫性を求めておらず変化に対する許容範囲が広いのかもしれません。

ただし今回のケースの場合、過度な値下げによる商品イメージの損失には確かに気を付けるべきだと思いました。「海外では現地化が大事」とはよく聞く話ですが、一方で「日本企業として、どうしても譲れない」という点もあることと思います。コアの部分だけは徹底しあとは任せるなど、ベトナムにおいては日本人側も臨機応変さが大事になってきます。


あさき・ともみ 秋田県生まれ。2000年からライター、韓国語翻訳・通訳、日本語教師と、言葉に関連した仕事に携わっている。2012年からハノイ市に居住。ベトナム航空機内誌「ヘリテイジ・ジャパン」への執筆や編集など活動を続けている。

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