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ベトナムのスタートアップ

前回はベトナムの大企業について説明しましたが、今回はそれらと対極をなすスタートアップがテーマです。ベトナムではスタートアップの創業や、スタートアップへの投資が盛んです。2021年における、ベトナムのスタートアップへの投資件数は165件、金額は14億4,200万ドルで、過去最大を記録しました。ここでは注目のスタートアップについて、お伝えします。

Mサービス/「モモ(MOMO)」

ベトナムのコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、電子マネー「MOMO」のポップやステッカーを多く目にします。ベトナムでもっとも多く普及している電子決済の1つです。

仕掛けているのは、ホーチミン市で2007年に創業したMサービス。プリペイド携帯電話の料金チャージから実店舗やオンラインモール、配車サービスの決済まで、あらゆるサービスとの提携でベトナムの電子決済市場シェアの半分以上を占めています。

「モモ」を使う理由をベトナム人の友人に聞くと「何より『モモ』決済に対応した店が多いし、『モモ』を使えば割引やサービスを提供する店も多いから」とのことでした。こうしたお得感も人気の秘けつのようです。

外出制限が行われたコロナ禍は、電子決済の利用を進める一要因となりました。「モモ」の成長性を見越して2021年、みずほ銀行が株式7.5%を取得したのを筆頭に、さまざまな企業から出資を受け、その資金でさらに開発を進めるという好循環となっています。

ティキ/「ティキ(TiKi)」

こちらもコロナ禍で力をつけてきたスタートアップです。「ティキ」といえば、もはやベトナムにおけるオンラインショッピングの定番の1つです。

とはいえベトナムにはさまざまなオンラインショッピングモールがあり、激しい競争が繰り広げられています。そのなかで「ティキ」が頭1つ抜け出せた理由としては、1つに「ティキナウ」があると思われます。これはハノイ市とホーチミン市で、注文から2時間以内に配達するというサービスです。こうしたサービスを支えているのが、約6万平方メートルにもおよぶ独自のフルフィルメントセンターです。

韓国系の新韓銀行がティキの株式10%を取得するなど提携や投資も盛んで、今後ますますの事業拡大が見込めます。

VNGコーポレーション/「ザロ(Zalo)」

「ザロ」は、ベトナム人の7~8割が使うといわれているメッセージアプリです。メッセージや音声のやり取り以外のさまざまな機能を搭載しているだけでなく、このアプリを開発したVNGコーポレーションは電子マネー「ザロペイ(ZaloPay)」、ニュースサイト「ジンニュース(Zing News)」など、さまざまなアプリやサービスを展開しています。

「ザロ」のなかでも、ショッピングや電子マネー、ホテル予約など、さまざまな機能が提供されているので、一度使うと手放せなくなる便利さがあります。ベトナムで働く日本人のなかでも、ベトナム人と連絡を取り合うため「ザロ」を使っている人が少なくありません。

エルサ/「エルサスピーク」(ELSA Speak)

「エルサスピーク」は言語学習アプリで、世界に400万人ものユーザーがいるといわれています。英語のスピーキング、とくに発音矯正で力を発揮。その秘訣がAIによる音声認識です。さまざまなユーザーの発音を分析し、良い発音を集めて標準化し、ユーザーの間違い指摘やアドバイスにつなげるのです。

優れた機能と技術力を認められ、2019年には米グーグルのファンド、グラディエントベンチャーズから700万ドルの投資を受けるなど、世界的にも名が知れてきました。好調の波に乗り、日本をはじめとした海外への進出も宣言しています。

ベトナムは創業が盛んな土地柄です。技術力とアイデア力で、思い切って起業する若い人が多く見受けられます。結果、上記のようなユニコーン企業となるケースも。成長中で市場がダイナミックに変わるベトナム市場だからこそ、ここで事業を展開するスタートアップの動向から目が離せません。

スタートアップ投資
https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/04/0426ba8bb463cebc.html


あさき・ともみ 秋田県生まれ。2000年からライター、韓国語翻訳・通訳、日本語教師と、言葉に関連した仕事に携わっている。2012年からハノイ市に居住。ベトナム航空機内誌「ヘリテイジ・ジャパン」への執筆や編集など活動を続けている。

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