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日本での幸せライフレシピ

仕事とプライベート

ベトナムの仕事場ではたまに、仕事とプライベートの区別がはっきりしていないと感じられるような場面に出くわします。今回はベトナム人の仕事とプライベートについて、お伝えします。

最初にいくつかの事例を紹介します。

オープンカフェに座って、コーヒー片手に談笑する男性会社員たち。朝や日中でもよく見かける光景です。それを見た多くの外国人が抱く疑問は「会社で働かなくてもいいの?」ということ。働かなければならないとは思いますが、時間に余裕のある時などは一息ついてから出勤したり会社に戻る人も多いようです。

またベトナムの事務所でよく見るのが、スタッフ同士の共同購入。コロナ以前は昼休みに市場やスーパーなどで買った果物や野菜を、女性社員同士が分け合っていましたが、最近ではオンライン購入した商品を分け合う様子が多く見られるようになりました。荷物がバイク便で事務所に届くため、勤務時間に商品を分け合う姿が以前よりも増えた気がします。

日本の職場なら「仕事をしろ」と注意を受けそうな場面ですが、ベトナムではそれほど問題になりません。その理由は、仕事とプライベートの区別が、日本ほど厳格ではないからだと思われます。

もちろん日本企業でも、社員が仕事中にコーヒーを飲んだり雑談をしたりすることがあります。通常この程度なら禁止されることはありませんし、本人も「仕事の時間に雑談するなんて」と自分を責めることもありません。なぜ罪を感じないのかというと、コーヒーや少しの雑談程度で仕事に大きな支障はなく、むしろ気分転換になるという認識があるからだと思われます。

これをそのままベトナムにあてはめれば、日本のコーヒーや雑談同様、勤務時間のカフェや協同購入に対して、大きな罪悪感がないのかもしれません。

もちろん、会社では仕事が最優先であるということは、ベトナム人もよく分かっています。公私混同が過ぎると上司に注意されるのは当然のこと。以前書いたように決断の速いベトナム企業なので、実績不振や態度の悪さなどが目に余る場合、すっぱり解雇というケースもあるようです。ですので勤務時間中のカフェにしろ共同購入にしろ、常識的に許される範囲で、彼らなりに仕事と息抜きのバランスを考えながら取っている行動だと考えられます。

・目くじらを立てすぎない

ところでベトナムでの仕事においては、人脈が重視されることが多々あります。社員クラスではなかなか通らない案件も、部長や社長など決定権のある人経由でコンタクトしたところ、すぐに通ったというケースも聞きます。知り合い経由で名前だけ知っている人、数度会ってSNSに登録し合っただけの人でも、仕事相談や面会など思い切った申し出をする場合もあるようです。ちょっとしたつながりでも無下にしない方が良いのです。つまり、カフェで人と会って情報交換をする、仕事中にSNSをチェックするなど、無駄に見えて有用な場合もあると思います。

これは、ある日本人現地採用者から聞いた話です。新たに赴任してきた駐在員マネージャーが、社員同士の共同購入を昼休み時間以外、原則禁止しました。外出先・時間は掲示板で告知、昼休みは1時間に収める、パソコンで私的なサイトを見ないよう上司が部下の画面を確認できるデスク配置にするなど、さまざまな「改革」を行ったそうです。これに対しベトナム人社員からは「息が詰まる」といった声が出ていて、マネージャーが出張などで事務所不在になると、社内がほっとした雰囲気になるということでした。

逆に言うと、上記の会社ではこれまで、会社での共同購入や出先への告知なしの外出などもあったということですが、前述の通りベトナム人社員としては、現地で許される範囲内で節度を守りつつ取っていた行動かもしれません。厳しすぎる統制は、ベトナム人社員をかえって追い詰めます。人脈が大切なこと、公私混同に対する感覚の違いがあることを考慮し、ベトナムにおいては目くじらを立てすぎず余裕を持って受け止めるくらいがちょうど良いのではないでしょうか。


あさき・ともみ 秋田県生まれ。2000年からライター、韓国語翻訳・通訳、日本語教師と、言葉に関連した仕事に携わっている。2012年からハノイ市に居住。ベトナム航空機内誌「ヘリテイジ・ジャパン」への執筆や編集など活動を続けている。

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