A Recipe for a Happy Life

日本での幸せライフレシピ

女性の日

ベトナムという国の素性を手っ取り早く、かつ正確に知るには、ベトナム女性の生き様をメンタル、フィジカル両面で学ぶことが一番だと思う。ベトナム3000年の歴史を長大な織物に例えれば、縦糸を織り込んできたのは女性で、横糸を担ってきたのは男性だと言えよう。間違いなく、縦糸は男性でなく、女性だ。

2020年12月14日付小欄「恋愛 Vol.1」で、いささか辛辣に、パワフルなベトナム女性の実態を紹介した。実際、紀元1世紀に起きた対中国の反乱を指揮したチュン姉妹や、20世紀半ばの抗仏ゲリラで、フランスに処刑(19)された女学生、ボー・ティ・サウら、救国の英雄、偉人の中には、女性が少なくない。「恋愛 Vol.1」では、ベトナム女性は「結婚したら猫から虎に変貌する」と紹介したら、知人の在日ベトナム人女性(既婚者)から「モデルは誰ですか?」と、凄みを含んだ目で尋ねられ、当人を目の前にしていることは口が裂けても言えなかった。

そんなベトナム女性も、「時代の波」を避けることはできないようだ。

東日本在住のキム・アインさん(30代、仮名)は来日して約10年になる。結婚して子どもをなしたが、わけあって離婚し、いまは会社役員をやっている。

「私、きっと、家族を持つことに向いてないんです」。普段は自信満々でバリバリ働くキム・アインさんだが、身の上話になると、途端に元気をなくす。見た目も美人だし、日本語と英語に堪能で、非の打ち所がないように映るだけに余計、キム・アインさんの抱える悩みの深さが気になる。

「毎日、忙しすぎるんじゃないですか」。そう水を向けると、キム・アインさんは首を横に振る。本当の原因は何だろう。

キム・アインさんと同様に「家庭に向いてない」という別の女性の声を、最近耳にした。この方も、日本でバリバリ働くベトナム女性だ。

このコロナ禍で、仕事が快調で、生活にゆとりがあり、家族との団らんの時間も増え、趣味や読者の時間も充実して・・・なんて人が、世の中の多数派とは思えない。何よりも家族を大切にするベトナム人といえど、仕事大事のあまり、家庭を顧みる余裕がなくなっているのではないか。共稼ぎが当たり前で、セカンドジョブを持っている旦那さん方、奥さん方も珍しくないし、ベトナム女性もなんだかんだ、栄養剤を飲んだくらいでは癒やせない疲れを抱えているのかもしれない。

ベトナムには、祭日「女性の日」が年に2回ある。3月8日の「国際女性の日」と、10月20日の「ベトナム女性の日」だ。前者は外国由来、後者はベトナム共産党、北部由来の祭日で、母親や奥さん、恋人さんら身近な女性に花束や化粧品などの贈り物をする日だ。このセレモニーを忘れると大変なことになり、口を聴いてくれなかったり、ご飯のおかずやお小遣いを減らされたりするのはまだましな方で、時には血の雨が降るとか、降らないとか。

だから、この日が来ると、男たちは、せっせとプレゼントを届け、ご機嫌をうかがい、日頃の感謝を口にする。そんな日が年に2回あるということは、それだけ、女性を大切にするお国柄であり、平たく言えば、ベトナム女性の圧倒的存在感を物語っている。

ベトナムでときどき、家の外で精を出し過ぎた旦那さんが、逆上した奥さんに「チョキン!」とやられてしまうのも、ベトナム女性の情の深さ、強さ、濃さ、重さの裏返しとも言える。ベトナム女性と一緒に暮らすと、「女性の日」は年に2回どころか、365回(うるう年は366回)あるという笑い話があるが、それで家の中がうまくいくのであれば、と短絡的に考えてしまうのは、筆者の不勉強ゆえだろうか。 今年の「ベトナム女性の日」がもうじきやってくる。お疲れの気味の奥さん方やガールフレンドたちの笑顔を見たいと願うベトナムの男たちに、心からエールを送りたい。


のじま・やすひろ 新潟県生まれ。元毎日新聞記者。経済部、政治部、夕刊編集部、社会部などに所属。ベトナム好きが高じて1997年から1年間、ハノイ国家大学に留学。2020年8月、一般社団法人日越協会を設立。現在、同協会代表理事・事務局長。https://www.nhatviet.jp/

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